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京都地方裁判所 昭和46年(わ)1115号 判決

本店の所在地

京都市右京区西京極橋詰町一八番地

法人の名称

扶餘建設工業株式会社

代表者の住居

京都市右京区西京極橋詰町一八番地

代表者の氏名

金山明弘

本籍

京都市右京区西京極橋詰町一八番地

住居

右同

扶餘建設工業株式会社代表取締役

金山明弘

大正一五年八月二七日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官中 聳出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告会社を罰金七〇〇万円に

被告人金山明弘を懲役一〇月に

各処する。

被告人金山明弘に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社は一般土木建設、建築請負、砂利の採集及び販売などを目的とする法人であり、被告人金山明弘は同社の代表取締役で、同社の事業全般につき指揮監督をしているものであるところ、被告人金山は被告会社の事業に関し法人税を免れようと企て、

第一  昭和四二年一一月一日から同四三年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得は三、九四〇万二、四九九円、これに対する法人税額は一、三五四万五、七〇〇円であるにかかわらず、架空の外註加工費を計上してその支払金額を現金又は同会社振出の小切手で留保して、架空名義の簿外普通預金、定期預金を設定したり、期末において架空の未払金なる負債を正規帳簿に計上するなどの不正の方法により所得を秘匿したうえ、同年一二月二八日京都市右京区西院花田町一〇番地右京税務署において、同税務署長に対し、別表第一の一記載の貸借対照表を添付して、所得金額が三一七万七、〇九四円あり、これに対する法人税額は八六万六、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し別表第二の(一)欄記載の財産増減法による計算にもとづく所得金額を申告せず、もつて不正の行為により、同会社の右事業年度の正規の法人税額一、三五四万五、七〇〇円と右申告税額八六万六、九〇〇円との差額一、二六七万八、八〇〇円をほ脱し、

第二  同四三年一一月一日から同四四年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得は三、一七六万七、七四八円、これに対する法人税額は一、〇八七万〇、五〇〇円であるにかかわらず、前同様の不正の方法により所得を秘匿したうえ、同年一二月二七日、前記右京税務署において、同税務署長に対し、別表第一の二記載の貸借対照表等を添付して所得金額が五四九万一、七五二円あり、これに対する法人税額は一六七万三、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出して別表第二の(二)欄記載の財産増減法による計算にもとづく所得金額を申告せず、もつて不正の行為により、同会社の右事業年度の正規の法人税額一、〇八七万〇、五〇〇円と右申告税額一六七万三、九〇〇円との差額九一九万六、六〇〇円をほ脱し、

第三  同四四年一一月一日から同四五年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得は三、七〇二万八、九五二円、これに対する法人税額は一、三三三万二、三〇〇円であるにかかわらず、前同様の不正の方法により所得を秘匿したうえ、同年一二月二六日、前記右京税務署において、同税務署長に対し、別表第一の三記載の貸借対照表等を添付して所得金額が六六六万五、五九六円あり、これに対する法人税額は二一七万三、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出して別表第二の(三)欄記載の財産増減法による計算にもとづく所得金額を申告せず、もつて不正の行為により、同会社の右事業年度の正規の法人税額一、三三三万二、三〇〇円と右申告税額二一七万三、九〇〇円との差額一、一一五万八、四〇〇円をほ脱したものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  登記官服部昇三郎作成の法人登記簿謄本

一  被告会社代表取締役金山明弘作成の定款写

一  領置してある総勘定元帳四綴(昭和四七年押第一九二号の一八ないし二一)、諸資料綴(同号の二二)、領収書綴(同号の二三)、定期預金メモ綴(同号の一)、手帳(同号の二)、関係取引一覧表(同号の三)

一  大蔵事務官福井捷治作成の国税査察官調査書類二綴

一  被告人の当公廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官の被告人に対する各質問てん末書(但し、昭和四六年七月十九日付の質問てん末書については判示第二、第三の各事実、同年同月二七日付の質問てん末書については判示第一、第二の各事実)

一  大蔵事務官の藤原健次郎に対する質問てん末書二通

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官木村祐一作成の法人税確定申告書謄本(検甲五号)

一  大蔵事務官福井捷治作成の脱税額計算書(検甲二号)

一  大蔵事務官の上林時栄、菊池玲子、古川宗太郎、杉田義雄に対する各質問てん末書

一  領置してある不動産取得関係メモ一綴(昭和四七年押第一九二号の四)、不動産売買関係書類一綴(同号の五)、羽束師古川町不動産売買契約書一通(同号の六)、メモ二枚(同号の七、八)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官木村祐一作成の法人税確定申告書謄本(検甲六号)

一  大蔵事務官福井捷治作成の脱税額計算書(検甲三号)

一  大蔵事務官の勝山明、内藤津子、辻憲三、大川勝一に対する各質問てん末書

一  領置してある不動産売買関係書類二綴(昭和四七年押第一九二号の九、一〇)

判示第二、第三の各事実につき

一  領置してある不動産売買契約証書一綴(昭和四七年押第一九二号の一一)

一  大蔵事務官福井捷治作成の未納事業税および貸倒引当金の算出に関する報告書

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官木村祐一作成の法人税確定申告書謄本(検甲七号)

一  大蔵事務官福井捷治作成の脱税額計算書(検甲四号)

一  領置してある不動産売買契約証書関係書綴(昭和四七年押第一九二号の一二)、不動産売買関係書類五綴(昭和四七年押第一九二号の一三ないし一七)

(法令の適用)

被告会社の判示各所為はいずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当し、被告人の判示各所為はいずれも同法一五九条一項に該当し、被告人については、各ほ脱金額にてらし、所定刑中懲役刑を選択するところ、以上はいずれも刑法四五条前段の併合罪なので、被告人につき同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告会社につき同法四八条二項により合算した額の範囲内でそれぞれ処断することとし被告会社を罰金七〇〇万円に、被告人を懲役一〇月に各処し、なお被告人について、重加算税、滞納税は既に支払い済みであること、その後の申告に関しては特段不正が認められないこと、その他諸般の情状を考慮し、同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 吉川寛吾)

別表 第一の一

貸借対照表

〈省略〉

別表 第一の二

貸借対照表

〈省略〉

別表 第一の三

貸借対照表

〈省略〉

別表 第二

〈省略〉

右は謄本である。

昭和四八年七月五日

同庁

裁判所書記官 高橋弘

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